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2018.04.01

母さんとホタルイカ

数日前、知り合いからホタルイカをいただいた。もちろん、ボイルしてあるやつだ。スーパーとかに並んでいるホタルイカは、10センチ×20センチくらいの発泡トレーに20~30杯くらい入っていて、小さな酢味噌が付いていたりするけど、これはその前の状態のやつだったので、何倍もある大きな発泡トレーに何百杯も入っていて、みんな凍っていた。知り合いは「欲しいだけ持ってっていいよ」と言ってくれたけど、そんなに大量には食べられないので、スーパーの発泡トレー2つぶんくらいの量をビニール袋に入れていただいてきた。

ちなみに、ホタルイカって、生物学的には「ツツイカ目 ホタルイカモドキ科」に属するイカなんだけど、これって変だよね?これは正真正銘のホタルイカなのに、そのホタルイカが「ホタルイカモドキ科」のイカだなんて、どう考えてもおかしい。子どものころに再放送で観た『マグマ大使』に「人間もどき」ってのが出てきたけど、これで言えば、あたしたち正真正銘の人間が「人間もどき科の人間」てことになっちゃう。「ホタルイカ科」のイカの中に、ホタルイカに良く似た「ホタルイカモドキ」っていうイカがいるなら分かるけど、「ホタルイカモドキ科」の中に「ホタルイカ」がいるなんて、やっぱり、どう考えてもおかしいと思う今日この頃、皆さん、イカがお過ごしですか?(笑)


‥‥そんなワケで、あたしは、その日の夜、自然解凍したホタルイカで晩酌しようと思い、お台所で福岡県の志賀島(しかのしま)の塩蔵ワカメの塩抜きを始めた。ボイルしたホタルイカと言えば、ワカメをたっぷりと添えて、どちらにも「からし酢味噌」を付けて食べるのが定番だけど、あたしは「わさび醤油」で食べるのも好きだ。で、この時点では、まだどちらの食べ方をするか決めてなかったんだけど、そこに母さんがやってきて、まな板で塩抜きしたワカメを大きめに切っていたあたしを見て「何を作ってるの?」と聞いたから、あたしは冷蔵庫からホタルイカを出して見せて、知り合いからいただいたことを報告した。

そしたら母さん、「ホタルイカなら酢味噌ね!」と言って、冷蔵庫から白味噌を出して、お砂糖とお酢を用意して、一番小さいボウルで酢味噌を作り出した。そして、お味噌を混ぜながら「フンフンフン~♪」と鼻歌を歌い出した。母さんは、お料理をする時に、決まって鼻歌を歌うのだ。これは、あたしが子どものころから何十年も変わっていない。あたしは、切ったワカメを冷蔵庫に入れたついでに冷蔵庫の中を見て、他に何を作ろうか考え始めた。すると、母さんの鼻歌が「歌」に変わった。


「ドミソ~~ドミソ~~ドレミファ酢味噌~~♪」


あたしは思わず噴き出しちゃった!だけど、そんなあたしをスルーして、母さんは酢味噌の味を見て、お砂糖とお酢を少しずつ足して、また混ぜ始めた。そして、母さんのおかしな即興ソングは、とんでもない方向へと進んでいった。


「酢味噌~~酢味噌~~スミソニアン博物館~~ワシントンにございます~~入場無料でございます~~♪」


あたしは、お腹をかかえて笑い、あまりにもおかしくて、その場にしゃがみ込んでしまった!たしかに、スミソニアン博物館はワシントンD.C.にあるし、入場料は無料だけど、どうしてこんな歌を即興で作りながら歌えるのか?そして、酢味噌が完成し、母さんのおかしな歌も終わり、あたしは2品目の「大根とチクワの煮物」を作りながら、母さんに言った。


「母さん、どうせなら『ワシントンにございま酢味噌~~入場無料でございま酢味噌~~♪』にしたほうが良かったんじゃない?」

「何言ってんのよ?それじゃせっかくの名曲がオヤジギャグになっちゃうじゃない」


母さんは笑いながら答えてくれたけど、「ドレミファ酢味噌」や「スミソニアン博物館」はオヤジギャグじゃなくて、「ワシントンにございま酢味噌」はオヤジギャグだという母さんの感覚が、あたしには分からなかった。でも、実際に口ずさんでみると、「酢味噌~~酢味噌~~スミソニアン博物館~~♪」だけなら笑えるけど「ワシントンにございま酢味噌~~入場無料でございま酢味噌~~♪」までやっちゃうと、サスガにやり過ぎで笑えなくなっちゃうことが分かった。そして、この辺が母さんの「さじ加減」であり「センス」なんだと思った。


‥‥そんなワケで、あたしの母さんは、もう70歳を越えているけど、見た目もやることも若い。細身のデニムパンツを穿いて、電動アシスト自転車で20キロくらいの距離を普通に走ってしまう。見た目は50代くらいに見えるので、そのお陰で、一緒にいる娘のあたしを30代前半くらいだと思っているご近所さんもいる。そんなあたしの自慢の母さんだけど、あたしがすごく小さかったころは、毎晩、お布団に入ると、あたしの横に添い寝をしてくれて、子守唄代わりに絵本や童話を読んでくれた。

あたしは、たいてい、物語の途中で眠ってしまった。もちろん、母さんはあたしを寝かせるために絵本や童話を読んでくれていたのだから、それで正解なんだけど、たまに短い絵本とかの時には、眠れないまま物語のラストシーンを迎えることがあった。絵本を読み終えても、あたしがまだ眠っていないと、母さんは最後のページをパラリとめくり、何も書かれていないページを見ながら、その物語の続きを創作で読み始めてくれた。「浦島太郎」の絵本なら、竜宮城から帰ってきた太郎が玉手箱を開けて、おじいさんになってしまったところで物語は終わりなのに、まだあたしが眠っていないと、母さんは次のように続けてくれた。


「竜宮城から送ってくれたカメは、おじいさんになってしまった太郎を見て、とてもかわいそうに思いました。そして、『さあ、私の背中に乗ってください!今度はカメの国へ行きましょう!』と言いました。またカメの背中に乗り、海の中にあるカメの国に行った太郎は、カメを助けてくれた英雄として、カメたちの大歓迎を受けました。カメの王様は、カメを助けてくれたお礼として、「ツルは千年、カメは万年」という名前の秘密のお酒を飲ませてくれました。すると、太郎はみるみるうちにもとの若者の姿に戻りました。」


あたしは、浦島太郎が無事にもとの姿に戻れたことに安心して、やさしい母さんの声に包まれながら、知らないうちに眠っていた。こんなふうに母さんは、どんな物語でも、あたしが最後まで寝つかないと、その続きを即興で創作して、まるで本に書かれている文章を読んでいるかのように、スラスラと話して聞かせてくれたのだ。あたしは、今回の母さんの「酢味噌~~酢味噌~~スミソニアン博物館~~ワシントンにございます~~入場無料でございます~~♪」という即興ソングを聴いて、ひとつの言葉から次の言葉を連想し、そこから物語を作っていくという母さんの発想力の原点を垣間見たような気がした。

あたしも、小さいころから空想が大好きで、1人で何時間でも空想あそびをすることができた。空き地にあった大好きな木に登り、いつもの太い枝にまたがり、母さんが作ってくれたクマさんのポシェットからチュッパチャプスのイチゴミルク味を取り出して、それを舐めながら遠くの屋根の上を流れる雲を眺めていると、いろんな空想が次々と浮かんできて、飽きることがなかった。これは今も続いていて、ひとつのことを考えていると、頭の中で次々と空想が連鎖していき、収拾がつかなくなることがある。でも、その空想の連鎖のお陰で、あたしは数々のヘアメイクの作品を生み出すことができたし、今も細々とお仕事を続けていられるのだ。


‥‥そんなワケで、あたしは、母さんのことを世界で一番尊敬しているし、世界で一番愛しているけど、そんな大好きな母さんと同じ空想力や発想力があたしの中にも受け継がれていて、それがあたしの大きな力になっていると思うと、とっても心強いし、とっても温かい気持ちになる。だけど、さすがに酢味噌を作りながら「ドレミファ酢味噌~~♪」だとか「スミソニアン博物館~~♪」だとかは思いつかないから、あたしもまだまだだと思った。母さんと一緒にホタルイカを酢味噌で食べながら、こんなことを思った今日この頃なのだ。


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