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2018.04.09

いざなぎ景気と三種の神器

高度経済成長期だった1950年代の半ばから1960年代の半ばまで、元号で言うと昭和30年代には、白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれていて、この3つを揃えることが理想であり、一種のステータスであり、経済成長の証のようなことだった。ちょうど、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の時代なので、このブログを読んでくださっている人の中にも、このころに子ども時代を送った人もいるだろう。そして、1965年から「いざなぎ景気」が始まると、今度は、カラーテレビ、クーラー、マイカーが「新・三種の神器」と呼ばれるようになった。

あたしは、この「三種の神器」から「新・三種の神器」への流れって、西郷輝彦、橋幸夫、舟木一夫の「御三家」から、郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の「新・御三家」への流れとオーバーラップしているような気がしている。だって、「御三家」が活躍し始めたのは「白黒テレビの中」で、「新・御三家」が活躍していたのは「カラーテレビの中」だからだ。

この「三種の神器」というのは、他にもいろいろあって、たとえば、工場や原発施設などの危険な場所で働く人たちの間では、ヘルメット、安全帯、安全靴を保安上の「三種の神器」と呼んでいるそうだ。また、2000年に入ってデジタル家電が普及し始めると、デジタルカメラ、DVDレコーダー、薄型テレビが、デジタル家電の「三種の神器」と呼ばれたという。ちなみに、当時の小泉純一郎首相は、2003年1月の施政方針演説の中で、薄型テレビ、カメラ付携帯電話、食器洗い乾燥機を「新・三種の神器」と名づけて、これらの商品の売れ行きが伸び、景気が回復していると述べていた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、これらの他にも、たくさんある「三種の神器」だけど、こうしたものは、どれも偽物で、本物の「三種の神器」は、天皇が皇位のしるしとして代々伝えた3種の宝物(ほうぶつ)、「八咫鏡 (やたのかがみ) 」、「八坂瓊曲玉 (やさかにのまがたま)」、「草薙剣 (くさなぎのつるぎ) 」のことだ。ようするに、本物の「三種の神器」を「銀座」とすれば、家電の「三種の神器」とかは「戸越銀座」みたいなものなのだ。

で、この本物の「三種の神器」、一般的には「さんしゅのじんぎ」と読まれているけど、もともとは「みくさのかむだから」というのが正式な読み方で、『古事記』や『日本書紀』によると、神様が地上に降りてきた天孫降臨の時に、アマテラスオオミカミ(天照大神)が孫のニニギノミコト(瓊瓊杵尊)に授けたものだと伝えられている。鏡は「知」、玉は「仁」、刀は「勇」を表わし、この3つが揃うと「三徳」が得られるという宝物だ。

あっ、そうそう、普通は「天照大神(アマテラスオオミカミ)」という書き方をするとこだけど、「瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)」なんて一度読んだだけじゃ覚えられないと思うので、今回は神様たちの名前はカタカナで書いて行こうと思う。そのため、あえて逆に「アマテラスオオミカミ(天照大神)」という書き方をしてみた。

さて、いよいよ本題に入るけど、『古事記』や『日本書紀』を読んだことがない人でも、「天(あま)の岩戸」とか「八岐大蛇(やまたのおろち)」とか「因幡の白兎」とか、こういう『古事記』や『日本書紀』に収められている個々のお話なら、子どものころに絵本で読んだり、テレビアニメの『日本昔ばなし』で観たりして、それなりに知っていると思う。


‥‥そんなワケで、「天の岩戸」は、太陽の神であるアマテラスオオミカミが天の岩戸に隠れたことで世界が真っ暗になっちゃった時に、八百万(やおよろず)の神々が手を替え品を替え、外に連れ出そうとするお話だ。この時、八百万の神々のアイデアで、アマテラスオオミカミを外へ連れ出すための道具として、イシコリドメノミコト(石凝姥命)は「八咫鏡 (やたのかがみ) 」を作り、タマノオヤノミコト(玉祖命)は「八坂瓊曲玉 (やさかにのまがたま)」を作ったのだ。そう、ここで、「三種の神器」のうちの2つが作られたってワケだ。

そして、天の岩戸の前で、八百万の神々がみんなで楽しそうに騒ぎ、その笑い声に興味を持ったアマテラスオオミカミが外の様子を見るために岩戸を細く開けたところで、例の「八咫鏡」を岩戸に向けると、その鏡に映った自分の姿を尊い神だと勘違いしたアマテラスオオミカミは、その姿をもっとよく見ようと、岩戸を開けて外に出てきた。これで、ようやく世の中に光が戻ったというストーリーだ。ホントはもっともっと複雑なんだけど、ザックリ言うとこんな感じなのだ。

「三種の神器」のうち、もう2つが登場しちゃったので、残るは「草薙剣 (くさなぎのつるぎ) 」だけど、これは、別名「天叢雲剣 (あまのむらくものつるぎ)」とも呼ばれている。そして、この「草薙剣」が登場するのは、ゴジラの強敵キングギドラのモデルにもなっている「八岐大蛇(やまたのおろち)」のお話だ。あたしは、このお話が大好きなので、「天の岩戸」より少しだけ詳しく書いちゃうけど、姉であるアマテラスオオミカミが天の岩戸に隠れちゃうほどの傍若無人な振る舞いを繰り返したことで、神様たちが暮す高天原(たかまがはら)を追放されちゃったスサノオノミコト(須戔鳴尊)は、出雲の国、現在の島根県にやってきた。

そして、斐伊川(ひいがわ)に沿って上流へと歩いていると、河原でおじいさんとおばあさんが、1人の美しい娘を囲んで泣いていた。スサノオノミコトが声を掛けると、おじいさんはアシナヅチ(脚摩乳)、おばあさんはテナヅチ(手摩乳)と名乗り、娘は美人で有名なクシイナダヒメ(奇稲田姫)だということが分かった。おじいさんのアシナヅチは、泣きながら話し始めた。


アシナヅチ「私たち夫婦には8人の娘がいたのですが、ヤマタノオロチがやってきて、毎年1人ずつ娘を食べてしまい、とうとう、このクシイナダヒメ1人だけになってしまったのです。そして、今年もまたヤマタノオロチがやってくる時期になったので、最後のクシイナダヒメも食べられてしまうのかと思うと、悲しくて涙が止まらないのです」

スサノオノミコト「そのヤマタノオロチというのは、一体どんな怪物なのか?」

アシナヅチ「1つの体に8つの首と8つの尾を持ち、目はホオズキのように真赤で、全身をコケが覆い、背中にはスギやヒノキが森のように生えていて、腹は人を食べた時に滴った血でただれていて、8つの山と8つの谷にまたがるほど巨大な怪物なのです」


この話を聞いて、暴れん坊のスサノオノミコトも一瞬、躊躇したが、目の前には美人のクシイナダヒメがいる。そこで、スサノオノミコトは、こんなふうに切り出した。


スサノオノミコト「そこにいるクシイナダヒメを俺の嫁にくれるなら、その代わりにヤマタノオロチを退治してやろう」


アシナヅチとテナヅチはしばらく悩んだが、最後に1人残った娘までヤマタノオロチに食べられてしまうくらいならと、この申し出を受けることにした。すると、スサノオノミコトは、自分の嫁になったクシイナダヒメを櫛(くし)に変えてしまい、自分の髪に差したのだ。こうしておけば、ヤマタノオロチに食べられることがないからだ。そして、アシナヅチとテナヅチに向かって、次のように命じた。


スサノオノミコト「まず、醸造を8回繰り返して強い酒を造れ。そして、ここに長い垣根を作り、その垣根に8つの門を作り、それぞれの門の中に酒を並べておけ」


アシナヅチとテナヅチは、急いで準備をし、スサノオノミコトに命じられた通りにした。すると、山が動くほどの地響きが起こり、ヤマタノオロチがやってきた。ヤマタノオロチは、すぐに酒の匂いに気づき、8つの門に8つの首を入れて、それぞれの酒を飲み始めた。そして、すべての酒を飲み干すと、山が震えるほどの大きなイビキをかいて寝てしまったのだ。

岩陰に隠れて見ていたスサノオノミコトは、「今だ!」と飛び出して刀を抜き、ヤマタノオロチの巨大な体を頭から斬り刻み始めた。頭、首、胴と「CTスキャン」のように輪切りにしていき、最後に尾に斬り掛かった。


「カキーン!」


スサノオノミコトの振り下ろした刀は、尾の中で何か金属質のものに当たった。不思議に思ったスサノオノミコトがヤマタノオロチの尾を切りひらいてみると、なんと、尾の中から立派な刀が出てきたのだ。そう、これこそが「三種の神器」の最後の1つである「草薙剣 (くさなぎのつるぎ) 」、別名「天叢雲剣 (あまのむらくものつるぎ)」だったのだ。そして、スサノオノミコトは、天の岩戸の一件で迷惑を掛けちゃった姉のアマテラスオオミカミに、この「草薙剣」を献上して謝罪した。

ヤマタノオロチを退治して一躍ヒーローになり、この出雲の国が気に入っちゃったスサノオノミコトは、この地に住むことに決め、見晴しのよい場所に、櫛から美しい人間の姿に戻ったクシイナダヒメとのスイートホームとして宮殿を造り始めた。その途中、雲が沸き立つ様子を見たスサノオノミコトは、感動して次の歌を詠んだんだけど、これが日本で最初に詠まれた和歌だと伝えられている。


「八雲立つ 出雲八重垣妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」
(やくもたつ いづもやえがきつまごみに やえがきつくる そのやえがきを)


いつものように「きっこ訳」で、補足を加えながら分かりやすい現代語に直すと、次のようになる。


「幾重にも雲が沸き立っている。「雲が湧き出る」という名の「出雲」の国に、その名の通りに、八重垣を巡らせたような雲が沸き立っている。私は妻を籠(こも)らせるために、建設中の宮殿に幾重にも垣根を巡らせたが、まるでその八重垣のような雲ではないか」


ちなみに、この和歌の冒頭の「八雲立つ」は、一般的な和歌なら「出雲」の枕詞だけど、この歌の場合はスサノオノミコトが実景を見て詠んだとされているので、「きっこ訳」ではそのまま訳してある。それから、「八雲」や「八重垣」というのは、8層に重なった雲や8重に巡らせた垣根のことじゃなくて、幾重にも重なった雲、幾重にも巡らせた垣根のことだ。たくさんの神々のことを「八百万(やおよろず)の神」、たくさんの野菜を売っている店のことを「八百屋」、日本の総理大臣のことを「嘘八百」と言うように、「八」という数字は「たくさん」という意味で使われることが多い。

美しい妻をめとり、出雲の国に素晴らしい宮殿が完成し、ようやく少し落ち着いたスサノオノミコトだけど、このスサノオノミコトは、長女のアマテラスオオミカミ、長男のツクヨミノミコト(月読命)に続く次男で、その両親はと言えば、あの有名なイザナギノミコト(伊邪那岐命)とイザナミノミコト(伊邪那美命)だ。そう、ここで、今回のエントリーの最初のマクラの部分の「いざなぎ景気」へとクルリンパするという流れだったワケだ。


‥‥そんなワケで、東京オリンピックが開催された1964年の日本は、高度経済成長期の真っ只中で、東京オリンピックや新幹線の整備などによって高い経済成長を記録していた。だけど、東京オリンピックが終わったとたん、それまで右肩上がりだった経済成長はピタリと止まり、重工業が次々と倒産し始め、証券会社が軒並み赤字に陥った。これが俗に言う「オリンピック直後に各国が経験している大不況」であり、とても金融緩和くらいじゃ回復が見込めないほどの状況になったため、政府は戦後初の建設国債の発行を決めた。ようするに「国債をジャンジャン発行して公共事業をバンバンやって景気回復の起爆剤にする」という作戦だ。そして、この作戦によって1965年から「いざなぎ景気」が始まったというワケだ。

当時は、インフラ整備など必要な公共事業はたくさんあったし、大企業の仕事が増えれば下請けもちゃんと儲かったし、お給料が増えてカラーテレビ、クーラー、マイカーという「新・三種の神器」を買う人たちも増え、生産から消費まですべてがうまく回ったワケだ。つまり、今、安倍首相が言っている「トリクルダウン」が正常に働いたってワケだ。でも、2020年の東京オリンピック後に訪れる不況に対しては、今のところ打つ手はない。そもそも1964年の時とは違って、最初から不景気の中で東京オリンピックを無理に開催する上、今の安倍政権が作り出した「いくら公共事業をバラ撒いても大企業と安倍トモだけが儲かる格差社会」では、半世紀前の東京オリンピックの時のような「トリクルダウン」はまったく期待できない。その上、借金で造った競技場や施設などが莫大な赤字を生み出し、ジワジワと株価や地価が下がり始め、「まさか、あの企業まで」と思うような大企業の倒産が連鎖的に発生し、日本は戦後最大の経済危機に突入すると数多くの経済アナリストが予測している。

そうなれば、政府は真っ先に「金融引き締め」に舵を切るだろうが、そんなものは「焼け石に水」どころか「火事場にガソリン」であって、経済悪化を加速させることにしかならない。すでに破綻しかけている年金制度は完全に破綻し、総人口の半数が高齢者になった日本は、資産を持たないお年寄りから順番に切り捨てられて行く地獄のような社会へと突入する。それもこれも、安倍首相というアメリカの飼犬によって「日本国民など二の次」というアメリカ最優先の政策が続けられてきた結果なのだ。


‥‥そんなワケで、ノンキな日本人の一部には、2020年の東京オリンピックを楽しみにしている人たちや、2020年の東京オリンピックで日本の景気が良くなるなどと妄想している人たちもいるけど、過去の例を見てみれば、1972年に開催した札幌オリンピックの借金を札幌市民が40年間も返済し続けた事実、1998年に開催した長野オリンピックの借金を20年経った今も長野市民たちが返済し続けている事実、どう見たって2020年の東京オリンピックは、東京都民にとっても日本国民にとっても「百害あって一利なし」だということが分かるだろう。1964年の東京オリンピックの時よりも、1972年の札幌オリンピックの時よりも、1998年の長野オリンピックの時よりも、比べものにならないほど景気が悪い状況で強行される2020年の東京オリンピックがもたらすものは、「いざなみ景気」でも「いざなみ景気」でもなく、安倍トモ以外の大多数の日本国民を地獄へと誘(いざな)う「アベ不景気」だと思う今日この頃なのだ。


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