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2018.05.30

干支のお話

去年2017年はコケコッコ~の酉年で、今年2018年はワンワンの戌年で、来年2019年は猪突猛進の亥年、そして、東京オリンピックがある2020年は、あたしの年、チュウチュウの子年だ。つまり、あたしは、2020年に「年女」になるってワケだ。今年は戌年なので、戌年生まれの人たちは、男性なら「年男」、女性なら「年女」になるワケだし、苗字が「黒沢」という男性なら「黒沢年男」になるワケだ‥‥なんてのもスタートから織り込みつつ、今回は「干支(えと)」について取り上げたいと思う。

で、「あなたの干支は?」と聞かれた時、多くの人は「ネズミ」とか「ウシ」とか「トラ」とかって答えるし、聞いたほうも「へえ~」なんて言って、特に疑問には思わないことが多い。だけど、これって間違いなんだよね。「ネズミ」とか「ウシ」とか「トラ」とかっていうのは、干支じゃなくて十二支(じゅうにし)なので、「あなたの十二支は?」と聞かれたのなら、この答え方でOKだけど、「あなたの干支は?」と聞かれたのなら、正確には「壬子(みずのえね)」とか「癸丑(みずのとうし)」とか「甲寅(きのえとら)」とかって答えなきゃならない。

でも、たいていの場合、「あなたの干支は?」と聞いてくる人のほとんどが、干支じゃなくて十二支を聞いたつもりになっているから、あたしが正確に「壬子だよ」と答えると、「え?ミズノエネって何?」って聞き返されちゃう。そして、そのたびに、「あたしの十干(じっかん)は壬(みずのえ)、十二支は子(ね)、だから干支はミズノエネなの」って説明しなきゃならない。そして、「何それ?」なんて言われると、さらに詳しく干支の説明をしなきゃならなくなる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、十干は、甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)の10通りで、十二支は、子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)の12通り。干支は、十干と十二支の組み合わせで、全部で60通りあるから、誰もが60歳を迎える年に、生まれた年と同じ干支が巡ってくる。60年間で、すべての干支をグルッと一周して生まれた年の干支に戻るから、それで「還暦」と言われているのだ。

だけど、計算が得意な人は、ここで1つの疑問が湧き起こったと思う。十干が10通りで十二支が12通りなら、すべての組み合わせは60通りじゃなくて120通りなんじゃないの?‥‥ってことだ。そう、ホントならそうなる。十干と十二支をすべて組み合わせたら、全パターンは120通りになってしまう。でも、実際には、このうちの半分は存在しないのだ。十干の最初の「甲」は、十二支の最初から1つおきに、子、寅、辰、午、申、戌の6つとの組み合わせしかなくて、次の「乙」は、残りの丑、卯、巳、未、酉、亥の6つとの組み合わせしかない。だから、「甲丑」とか「乙子」とかの組み合わせは、100年待っても巡ってこない。

「十干」というのは、古代中国の思想である「陰陽五行説」に基づいたもので、ザックリ解説すると、五行とは、木(き)、火(ひ)、土(つち)、金(か)、水(みず)の5つで、それぞれに陰と陽がある。そして、陰と陽は兄弟で、陽が兄、陰が弟とされている。つまり、五行の木に兄と弟、火にも兄と弟、土にも兄と弟‥‥ということになっている。で、兄は「え」、弟は「と」と呼ばれているため、「木の兄」は「きのえ」、「木の弟」は「きのと」となる。

文章での説明は分かりずらいかもしれないけど、十干の甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸は、「甲と乙」が兄弟、「丙と丁」が兄弟、「戊と己」が兄弟‥‥ってふうに5組の兄弟になっていて、兄のほうは十二支の中の子、寅、辰、午、申、戌の6つと組み合わせになり、弟のほうは残り半分の丑、卯、巳、未、酉、亥の6つと組み合わせになっている。それで、干支は全部で60通りなのだ。


‥‥そんなワケで、あたしの場合は、昭和47年、西暦1972年生まれなので、十干は「壬(みずのえ)」、十二支は「子(ね)」、だから干支は「壬子(みずのえね)」になる。ちなみに、十二支の順番を決める競争の時、ズル賢いネズミは、朝早く出発した牛の背にコッソリと乗り、ゴール直前で牛から飛び降りて一番最初にゴールインするという要領のいい方法で十二支の先頭に名を連ねることになり、一方、猫は朝になってもずっと寝ていたので十二支に入れなかった。ま、「みずのえね」なんて、普通に生活してる上ではほとんど耳にしない干支だから、聞き慣れない人も多いと思うけど、十干の「壬」は「水の兄」で、十二支の「子」も「水の兄」なので、陰陽五行説では同じ気が重なる「比和(ひわ)」と言って、その運気が相乗効果で倍増しちゃうのだ。

ただし、これは、良い運気だけでなく、悪い運気も倍増しちゃう。このパターンで、何よりも有名なのが「丙午(ひのえうま)」だ。こっちはメジャーだから聞いたことがある人も多いと思うけど、この干支はあたしの「壬子」と正反対で、十干の「丙」も「火の兄」、十二支の「午」も「火の兄」という「比和」なので、干支の中で最も「激しく燃え盛る」という運気を持っている。そのため、中国では古来より「丙午の年は火災が多く発生する災いの年」と言われていて、これが日本にも伝わり、日本でも60年に一度の「丙午」の年には火災に気をつけてきた。そして、江戸時代になると、1666年の「丙午」の年に生まれた八百屋お七が「大火事が起これば愛する彼に会える」と思い込んで江戸の町に放火した大事件が起こり、「丙午の年に生まれた女は情念が激しくて惚れた男を焼き殺す」という迷信まで生まれてしまった。

そして、この迷信は日本全国に広まり、八百屋お七の時代から300年以上も信じられてきた。たとえば、一番最近の「丙午」は、昭和41年、西暦1966年なんだけど、当時の日本の出生率は「2.0」を超えていた。1950年から1980年までの30年間を見ると、すべての年が「2.0」を超えている。それなのに、この1966年だけがガクッと下がって「1.58」なのだ。ちなみに、前年の1965年は「2.14」で、翌年の1967年は「2.23」で、その間の1966年だけが「1.58」と低くなっている。これは、当時の全国の夫婦が、この年に子どもが生まれて、もしも女の子だったら困るからと、なるべく子どもを作らないようにしたからなのだ。

そう言えば、あたしが子どものころは、まだ、お見合い結婚が多かった時代なので、知り合いの娘さんのお見合い写真を抱えたお節介なおばさんが、あちこちを回ってお見合い相手を探すようなことが日常的に行なわれていた。そんな中で、「丙午の年に生まれた女性は、それが理由でなかなかお見合い相手が見つからない」という話を聞いた記憶がある。たぶん、テレビドラマの中でそんなやり取りがあって、意味が分からなかったあたしに、母さんかおばあちゃんが教えてくれたんだと思う。

ちなみに、古い時代には、「火の兄」が重なる「丙午」の年には火災が多く、この年に生まれた女性は気性が激しい、という迷信とセットで、あたしの干支、「水の兄」が重なる「壬子」の年には、洪水などの水害が多く起こり、この年に生まれた男性は気が弱い、という迷信もあった。でも、実際には、干支とは関係なく水害が起こるし、この年に生まれた男性たちが特に気が弱かったということもなかったため、こちらの迷信は自然消滅したみたいだ。


‥‥そんなワケで、有名な「丙午」よりも、もっとメジャーな干支と言えば、やっぱり「甲子(きのえね)」だろう。そう、阪神タイガースのホームであり、高校野球の舞台でもある「甲子園球場」だ。「甲子園球場」は、大正13年、西暦1924年の「甲子」の年に建設されたため、このように名づけられた。ちなみに、1924年に誕生した球場なので、昭和59年、1984年に「還暦」を迎えていて、平成6年、1994年には70歳の古希(こき)を、平成13年、2001年には77歳の喜寿を、平成16年、2004年には80歳の傘寿(さんじゅ)を、平成24年、2012年には88歳の米寿を、平成26年、2014年には90歳の卒寿を迎えている。あとは、2023年に99歳の白寿、2024年に100歳の百寿を迎えるわけだけど、その時には平成の次の元号になっているんだよね。

ちなみに、70歳の古希は、中国の唐の時代の詩人である杜甫(とほ)の「曲江(きょっこう)」という詩の一節、「酒債は尋常行く処に有り、人生七十古来稀なり」(酒代のツケはどこにでもあるが、七十年も生きる人は昔から稀である)に由来している。77歳の喜寿は、「喜」という漢字の草書体が七を3つ重ねた形で「七十七」と読めることに由来している。また、80歳の傘寿は、「傘」の略字が八と十を重ねた形であることに由来していて、88歳の米寿は、「米」という漢字が「八十八」と読めることに由来している。90歳の卒寿は、「卒」の略字の「卆」が「九十」と読めることに由来していて、99歳の白寿は、「白」という漢字が「百」から「一」を引いた形であることに由来している。100歳の百寿はそのままだけど、100年が「一世紀」であることから、紀寿とも呼ばれている。ただし、音で聞くと「喜寿」と同じなので、一般的には百寿を使うことが多いようだ。

さて、話は干支に戻るけど、今年は、十干が「戊(つちのえ)」で十二支が「戌(いぬ)」なので「戊戌(つちのえいぬ)」になる。「戊」と「戌」って漢字が似ているから、紛らわしいよね。十干と十二支には似ている漢字がいくつかあるので、他にも「己巳(つちのとみ)」とか「甲申(きのえさる)」とかが紛らわしい。つーか、そもそも十二支だけでも紛らわしいんだよね。だって、ウシが「丑」でウマが「午」なんだよ。「午」のほうがウシっぽいじゃん。でも、これもちゃんと理由があって、「牛」という漢字には角(つの)があって「午」という漢字には角がないという、象形文字ならではの由来なんだよね。


‥‥そんなワケで、今年は「戊戌」なので、来年は「己亥(つちのとい)」になり、その次は「庚子(かのえね)」になり‥‥って、手元の一覧表を順番に見ていたら、大変なことに、8年後の2026年には「丙午(ひのえうま)」が巡ってくることが分かった。まあ、変な迷信とかは信じないあたしとしては、「午年は競馬の年」なので12年ごとに巡ってくるのが楽しみなんだけど、午年は午年でも前回の「丙午」はあたしが生まれる前の1966年なので、あたしは8年後に生まれて初めての「丙午」を迎えることになるのだ‥‥ってことは、いくら火事にならないように火の元に気をつけていても、あたしの場合は、競馬で負け過ぎて家計が「火の車」になりそうな予感がしてきた今日この頃なのだ(笑)


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