明けましておめでとうございます♪
皆さま、明けましておめでとうございます♪
今年も「歳旦三つ物」を詠みました。
歳旦三つ物
立膝の母へ注ぎたるお屠蘇かな
猪鹿蝶の並ぶ座布団
ハイヒールいちにのさんで春の野に
きっこ
俳句では本来、自分の句を自分で解説することは野暮なのでNGなのですが、俳句を勉強していないと意味の分からない言葉や言い回しもありますので、今年も簡単に解説させていただきます。
まず、最初の五七五の発句ですが、季語は新年の「お屠蘇(とそ)」です。本来のお屠蘇は新年に飲む薬酒のことで、正式には「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」と言い、日本酒に山椒や粉末の生姜、肉桂や防風など、いろいろな香辛料や漢方薬などを調合して作ります。しかし、現在では、普通の日本酒をお屠蘇として飲む家庭がほとんどですし、お正月用に金粉入りの日本酒なども売られています。
我が家の場合は、母さんもあたしも大好きな日本酒、富山県の「銀嶺立山」を飲むのが定番になっています。でも、どうしてお屠蘇を受ける母が「立膝(たてひざ)」なのでしょうか?行儀も悪いですし、もしかしたら足を怪我していて正座ができないのでしょうか?‥‥という疑問を持たせておいて、次の七七の脇で謎が解けるのです。そう、母さんとあたしは座布団を挟んで向かい合って座り、花札で「こいこい」をして遊んでいたのです。
この「歳旦三つ物」は年賀状に間に合わせるために去年のうちに詠んでいますので、今年のお正月の景ではありません。でも、我が家では、お正月は必ず母さんとお酒を飲みながら花札勝負をするので、去年のお正月のことを思い出して詠んだのです。短冊を5枚そろえたあたしは、手札の梅の短冊を出せれば「赤短」が完成するため、強気で「こいこい!」をしました。すると、母さんが一気に「猪鹿蝶(いのしかちょう)」を完成させて上がってしまったのです。
母さんは花札の「こいこい」がとても強くて、10戦すると8回か9回はあたしが負けてしまいます。去年のお正月も母さんは絶好調で、序盤から大きな手を連発して3連勝してしまいました。負けているあたしは必然的に大きな手を狙うのですが、あたしが大きな手を狙っていると安い手で流されるし、とても太刀打ちできません。この時も、得点で大きく引き離されているあたしが短冊のみの安い手で流すワケはないと踏んで「猪」と「鹿」をキープしていたようです。
さて、「歳旦三つ物」では、五七五の発句と七七の脇は「お互いに寄り添うように新年の景を詠む」という決まりなので、ある意味、繋げて読むと和歌のようになります。でも、最後の五七五の第三は、それまでの世界観から大きく飛躍した春の句、もしくは無季の句を取り合わせることになっています。それは、新年のおめでたい「ミニ連句」なので、未来への広がりを感じてもらうためなのです。
今回の第三は「ハイヒールを履いて春の野に足を踏み出した」というだけの句ですが、「春」ということから、このハイヒールが「新品」であることを匂わせています。そして、おろしたての新品のハイヒールなのに、汚れてしまう上に歩きにくい「春の野」へ足を踏み出すため、「いちにのさんで」と心の中で掛け声を掛けているのです。すべて濁音のない句の中に、たった一文字だけ「で」という濁音をあえて用いることで、この「で」がまるで走り幅跳びの「踏切線」のように感じられるのです。
さらに解説すると、この「歳旦三つ物」には、もうひとつの仕掛けが隠されているのです。今年は「亥年」なので、「猪」という文字が入っている「猪鹿蝶」という言葉を脇に使ったことは誰にでも分かると思いますが、脇だけでなく発句にも第三にも「猪」が隠れているのです。発句では、あたしの注ぐお屠蘇を受けている母さんの手に「お猪口(ちょこ)」があります。そして、第三では、「いちにのさん」という掛け声が、アントニオ猪木さんの「いち、に、さん、ダーッ!」にカケてあるのです。
俳句は、そこに書かれてある十七音の文字だけを読むのではなく、想像力を働かせて句のイメージを脳内で映像化して鑑賞するものなのです。そうすると、十七音には書かれていないプラスアルファの描写や仕掛けが見えて来て、何倍も豊かな世界が広がるからです。
‥‥そんなワケで、あたしは、去年の11月から12月にかけて入院治療をして、現在も自宅療養中なので、正直、今年は不安だらけのスタートになってしまいました。でも、2月の「立春」までには完全に身体を治し、新品のハイヒールで春の野へ一歩踏み出すように、元気に本業に復帰したいと思っています。それから、去年12月にスタートした『きっこのメルマガ』は、明日1月2日が新年号の配信日です。今日中に登録すれば明日2日に配信されますし、初月は1カ月間無料で読めますので、まだ登録していない人は、以下のリンクから登録して、この機会にぜひ読んでみてください。
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きっこ拝
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