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2025.01.01

謹賀新年

謹賀新年

Hb4


歳旦三つ物
多摩川の蛇行してゆく淑気かな
年賀は満足補足は蛇足
春の水蛇口出づれば飛び跳ねて
きっこ


今年も新年のミニ連句「歳旦三つ物(さいたんみつもの)」を詠みました。俳句は本来、自分の句を自分で解説することは野暮なのでNGですが、俳句を勉強していないと意味の分からない言葉や決まりごとなどもありますので、今年も簡単に説明させていただきます。

まず、最初の五七五の「発句(ほっく)」は、あたしが約二十年ほど住んでいた世田谷区のマンションの前を流れている多摩川を詠みました。多摩川は東京と神奈川の間を流れる都会の川なので、下流域から中流域にかけては、あたしの住んでいた二子玉川のような駅周辺だけでなく、多くの部分が護岸されています。

しかし、二子玉川から原チャリでしばらく上流へ向かうと、数百メートルだけ自然な流れになっていて、大きくS字に蛇行している場所があるのです。このエリアはあたしのお気に入りの場所で、あたしが名づけた秘密のお花畑や秘密の池、秘密の林があります。二子玉川のマンションでひとり暮らしをしていた時は、新年を迎えるとここに来て、川向こうの遥か丹沢山地の上に見える富士山を眺めていました。

自然に蛇行している川は、護岸されて真っ直ぐにしか流れることができなくなった川と違って、真冬でも何とも言えない生命感に溢れています。そして、その生命感に溢れた川が、さらに新春の厳かでおめでたい空気感である「淑気(しゅくき)」に満ちるのが、お元日という「ハレ」の日なのです。


二番目の七七の「脇」は、ちょっとした言葉遊びです。季語の「年賀」は、新年を迎える際に、家族や親しい人たち対して幸せや感謝の気持ちを伝えるための挨拶や贈り物のことで、年賀状からお年玉まで、広い意味で使われます。この句の場合は、親戚の叔母さんがお年玉や贈り物をくれるのは嬉しいけど、そのついでに、子どもの時は「しっかり勉強するのよ」とか、大人になってからは「今年こそ良いご縁があるといいわね」とか、そういう余計な「補足」はいらないから!‥‥という句意です。

そもそもは「巳年」にちなんで「蛇足」という単語を詠み込むために考えた句でしたが、あえて七七を八七の字余りにするという小技で、蛇足感を演出してみました。定型に収めるのなら「年賀は不足」と詠み「お年玉も少ない上に説教かよ!」という句意にする方法もありました。しかし、ここまで面白さに重心を移してしまうと、俳句ではなく江戸時代の俳諧に寄り過ぎてしまうため、ここでは抑えました。


最後の五七五の「第三」は、発句と脇から大きく飛躍した春の句です。発句と脇が「新年のおめでたい景」を詠むのに対して、第三は「春の希望」を詠む決まりです。今回は、発句で「多摩川」を詠んだので「水」に引き戻しつつ、あたしが何よりも「希望」を届けたいテーマを詠みました。

今日で能登半島地震から一年ですが、すでに大方の復旧が終わって観光客を受け入れ始めている地域もあれば、今も倒壊した住宅が手つかずのまま放置されている地域もあります。そして、この復旧格差に追い打ちを掛けたのが、昨年九月の豪雨災害でした。大量の流木などが散乱したまま、今も三百人近い住民が避難所生活を余儀なくされており、その人たちは避難所で今日の元日を迎えたのです。

石川県では今日、地震発生時刻の午後四時十分に合わせて、午後三時半から追悼式と黙祷が行なわれますが、ご家族を失った方々にとっては、元日が大切なご家族のご命日なのです。ご家族を失った方々、被災された方々のことを思うと、とても胸が痛みますし、どんな気持ちで今日を迎えたのかと思うと、言葉になりません。


※2025年1月1日15時30分より、以下のリンク先で追悼式を生中継します。
https://www.youtube.com/watch?v=PuV7AtBUFHs


あたしにできることは、これまで通り僅かな寄付金を送り続けることと、少しでも早く復旧が進むように祈ることしかありません。しかし現実は、一年経った今も、水道から水が出ない住宅が数多く取り残されています。そして、その大半は自治体から「復旧困難」と診断され、水が出るようになる目途さえ立っていないのです。

「水」は復旧の第一歩です。そのため、あたしは「一日でも早く水が出ますように」という思いを「第三」の句に込めました。すべての住宅の蛇口から勢い良く水が出て、その水が元気に飛び跳ね、春の日差しにキラキラ輝いている景をイメージして、今年の「歳旦三つ物」の「春の希望」とさせていただきました。

それでは、今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。


令和七年一月一日  きっこ

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