新年、明けましておめでとうございます♪

新年、明けましておめでとうございます。

Gs5

【歳旦三つ物】
パドックをぐるぐる回る御慶かな
屠蘇なみなみと淀の金杯
春の雲まで踏み切つてジャンプして
きっこ


今年も新年のミニ連句「歳旦三つ物(さいたんみつもの)」を詠みました。俳句は本来、自句解説は野暮なのでNGですが、俳句を勉強していないと意味の分からない言葉や決まりごとなどもありますので、今年も簡単に解説させていただきます。

まず「歳旦三つ物」の基本的な形式ですが、五七五の「発句(ほっく)」に七七の脇句(わきく)を付け、そして五七五の第三の句で転じる、というスタイルです。

細かい決まりごととしては、発句は新年の季語を使い、なるべく「や」「かな」「けり」などの強い切れ字を用い、新春の歓びを詠うこと。脇句の七七は、こちらも新年の季語を使い、句意の上で発句を受け、句末は名詞などで体言止めにすること。そして第三の句は、春の季語を使うか無季にして、上五で切り、句末は「て」「に」「にて」「らん」「もなし」のいずれかで止め、発句と脇句の世界から大きく飛躍する内容を詠むこと。これがルールです。


さて、今年のあたしの「歳旦三つ物」ですが、今年は「午年」なので、あたしは大好きな競馬をテーマにして詠みました。発句の「パドック」とは、競馬に出走する競走馬たちをレースの直前に下見させる楕円形の運動場のことです。馬番と馬名の入ったゼッケンをつけた競走馬をそれぞれの厩務員が曳き、パドックをぐるぐる回って馬体の仕上がり具合や馬の精神状態などを競馬ファンに見せるのです。

季語は「御慶(ぎょけい)」、新年の慶びを述べる挨拶のことで「年賀」と同義です。年が明けて最初の競馬開催日においては、レース直前のパドックこそが、競馬ファンたちへの主催者側からの「新年の挨拶」ということになるのです。

JRA(日本中央競馬)では、毎年一月五日か六日に開催される京都競馬場での「京都金杯」と中山競馬場での「中山金杯」という東西の「金杯」が新年初の重賞(G3)なので、このレースを一年の「競馬初め」とするファンが数多くいます。

脇句の「淀(よど)」とは京都競馬場の通称です。そのため「淀の金杯」と言えば、競馬ファンであれば「京都競馬場で開催される新年初の重賞レース」と分かります。しかし、競馬に興味のない人は「淀の金杯」だけでは意味が分からないため、ここに新年の「屠蘇(とそ)」をいう季語を取り合わせて「京都の伏見(淀)あたりでの新年会」の景をイメージさせました。このように詠めば、競馬として解釈した人も「競馬に勝って祝杯」という形に着地できるというダブルミーニングになるからです。

しかし、東西でレースがあるのに、片方の京都競馬場のレースだけを詠むのはバランスが悪いのではないか?‥‥と思った人は、もう少しお待ちください。その疑問は最後の第三の句で解明しますから。

そして、その第三の句は、特に具体的な描写を用いない漠然とした景です。春の野原を走り回る元気な子どもたちが、青空に浮かんだ真っ白な雲に向かってジャンプしているような、イメージのみの句です。しかし、この句を競馬ファンが読めば、誰もが毎年四月に中山競馬場で開催される障害レースのG1「中山グランドジャンプ」のことだと分かるのです。

大人の背丈ほどもある大障害、大竹柵(おおちくさく)、大生垣(おおいけがき)などを次々と飛び越えて行く「障害レース」は、一般的な平地でのレース以上に「人馬一体」が要求される「馬術」としての要素が大きい高度な競走です。五百キロ前後もあるサラブレッドの馬体が次々と障害を飛越して行く様は迫力満点ですが、それをさらに盛り上げているのがラジオNIKKEIの山本直也アナウンサーの「踏み切ってジャンプぅ!」という名フレーズなのです。

競馬の実況と言えば、先頭から後続へと舌を噛みそうな馬名を早口で伝えて行く独特のものですが、音声だけのラジオ中継でも平地のレースであれば伝わります。しかし、様々な障害を飛越しながら走る「障害レース」の場合は、音声だけでは伝わりにくい部分もあるのです。

しかし、ラジオNIKKEIで『中央競馬実況中継』の実況を担当し、現在はフリーで活動している山本直也アナは、この「踏み切ってジャンプぅ!」というオリジナルのフレーズを織り込むことで、各馬がどのタイミングで飛越をしたのか、その結果、順位がどう変わったのかなど、まるで映像を観ているかのようにラジオ中継で伝えて来たのです。

その結果、この「踏み切ってジャンプぅ!」というフレーズは「障害レース」の代名詞、ことに「障害レース」の頂点である四月の「中山グランドジャンプ」の代名詞となったのです。そう、ここで脇句の伏線回収です。この第三の句の中に中山競馬場の大きなレースを隠しているので、脇句では京都競馬場の金杯だけを詠み、東西二つの競馬場のバランスを取ったのです。

ちなみに、ラジオNIKKEIから発売されている「踏み切ってジャンプぅ!Tシャツ」は大人気で、毎年、新しいデザインのものが販売されています。「中山グランドジャンプ」など大きな障害レースの開催日に競馬場へ行くと、このTシャツを着たファンがたくさんいます。

もひとつちなみに、あたしが一番好きな野球人は、昨年還暦を迎えた吉井理人(よしい まさと)さんです。大谷翔平選手が日本ハムファイターズに在籍していた時にピッチングコーチをつとめていて、2023年から昨年2025年まで三年間はロッテマリーンズの監督をつとめていました。吉井理人さんは馬主として競走馬を所有するほどの競馬ファンですが、そんな吉井理人さんがマリーンズの監督時代の2024年、新年の抱負として掲げたのが「踏み切ってジャンプ!!」という言葉だったのです。
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202312290001144.html


そして、このニュースがきっかけとなり、この年の「中山グランドジャンプ」を翌月に控えた同年三月二十日、ラジオNIKKEIで特別番組『踏み切ってジャンプ!マリーンズ吉井理人監督 2024年への決意』が放送され、番組内で吉井監督と山本直也アナの対談が実現したのです。こうした経緯からも分かるように、この「踏み切ってジャンプぅ!」というフレーズは「競馬ファンなら知らない者はいない名フレーズ」でありながら、一般的には極めて認知度が低いのです。

しかし、初めに書いたように、第三の句は「発句と脇句の世界から大きく飛躍する内容」でなければなりません。つまり、発句と脇句で「競馬」を詠んだあたしの場合は、第三の句では競馬関連はNGなのです。しかし、十二年に一度の「午年」なのだから、どうしても全体的に競馬のフレーバーを漂わせた「歳旦三つ物」を完成させたい!

そこであたしは、競馬ファン以外にはほとんど知られていない、このフレーズを第三の句に詠み込んだのです。このように一般的に認知度の低いフレーズであれば、競馬ファン以外には分からないため、表向きは「シレッとセーフ」なのです。そして、それだけでなく、そのフレーズ自体も「大きく飛躍した内容」なのですから、これほど最適な言葉はありません。その上、脇句もダブルミーニングの構成して、一見、競馬のこととは分からないように詠んでいるのです。

ようするに、競馬を知らない人が読めば「一般的な普通の歳旦三つ物」なのに、競馬ファンが読むと「あちこちに競馬ネタが忍ばせてある特製おせち料理」のような作品なのです。

さらに専門的なことを言えば、第三の句には「上五で切る」というルールがあります。そこであたしは「春の雲」と名詞切れにした体(てい)を取りつつも、実際には「春の雲まで/踏み切つて~」と「句またがり」にして、このルールをスルーしたのです。校則で制服のスカート丈が決まっているのに、下校時に校門を出たとたん、ウエスト部分をくるくる巻いてミニスカートにするような裏技なのです(笑)


さて、今、世界は大きな時代の転換点を迎えており、日本も巻き込まれ始めています。そして、このまま歴代の自民党政権の方針である「長いものに巻かれろ」という属国政策を続けて行けば、日本は間違いなく戦争の当事国になりかねません。しかし「無理だから」と短絡的に諦めて投げ出すのではなく、脳みそから煙が出るほど頭を使いまくり、相手の裏の裏をかき、相手の言いなりになったフリをして水面下で日本にとっての最悪を回避することは十分に可能なのです。

すべてを諦めて悲観的になってしまうのは最悪ですが、かと言って楽観的過ぎても解決には結びつきません。悲観的でも楽観的でもなく、常にクールに状況を分析し、時には繊細に、時には大胆に立ち回り、校則を破らずに制服をミニスカートに変えてしまう。「歳旦三つ物」のルールを破らずに言いたいことを言ってしまう。今、あたしたちに求められているのは、こうした場面場面でのフレキシブルな対応能力なのです。

今年の「歳旦三つ物」であたしが伝えたかったことは、この一点です。そして、近い将来に訪れるかもしれない大きな困難も、あたしたちの知恵とセンスで飛び越えてしまいましょう!山本直也アナの「踏み切ってジャンプぅ!」という掛け声とともに!

それでは、今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。


令和八年一月一日  きっこ

 

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